時雨は季節限定!降水量が少ないだけじゃない【旧暦第53候 霎時施 こさめときどきふる】

時雨は季節限定!降水量が少ないだけじゃない【旧暦第53候 霎時施 こさめときどきふる】

【小雨がときどき降る時期 新暦10月28日~11月1日頃】

 

 

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みにしば
こんにちは~ 外に出ると雨がやむ晴れ女の、みにしばです
今日は茶道の師匠にゃんこ先生と一緒です

にゃんこ先生(92歳)
娘時代は戦争で「わが青春に喰うものなし」だった、にゃんこです
好きな洋菓子は長芋カステラです
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みにしば
にゃんこ先生から茶道で教えていただいたことを残しておこうと思って

にゃんこ先生
茶道は季節の移ろいなしには成り立たないからね
しっかり勉強しなさいよ
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みにしば
はい! 今日は心が豊かになる
「時雨(しぐれ)」についてです

 

旧暦10月は時雨月(しぐれづき)

新暦では、もうすぐ11月(旧暦はおよそ1カ月遅れなので旧暦の10月)。
季節を綴る72候の第53候 霎時施(こさめときどきふる)。

紅葉のピークを迎える信州では、空調を暖房に切り替えたり、早い方は車のスタットレスタイヤを付け替える時期。霜がくる前に刈取りを急いだ蕎麦や早生りんごが、並ぶ市場を眺めるのも、いとおかし。

ついこの間まで、暑いくらいの秋晴れだったのに、弱い雨が降ったりやんだり、はっきりしない「時雨(しぐれ)がち」な気候から旧暦の10月は「時雨月(しぐれづき)」という異称がつきました。

 

 

霎はこさめ?しぐれ?

「こさめ」と「しぐれ」の違い

10月末、この時期は小雨が時々ふる頃とのことですが、小雨は一年中降っていますよね???

明治時代の略本暦では、「霎」を「こさめ」と読ませていますが、

江戸時代の宝暦暦(ほうりゃくれき)などではもともとは「しぐれ」となっていたんですって。

まず「こさめ」と「しぐれ」の違いを調べてみました。

 

 

こさめ(小雨)

数時間続いても雨量が1mmに達しないくらいの雨
引用:気象庁HP

 

こまかに降る雨。小降りの雨。⇔大雨
引用:三省堂大辞林

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みにしば
「こさめ」は年中使える
文明開化の明治時代に決めた雨量基準ね

 

 

 

しぐれ(時雨)

しゅう雨性以外の雨またはしゅう雨性の雨と特定できない場合に用いる引用:気象庁HP

 

秋の末から冬の初めごろに、降ったりやんだりする小雨
引用:三省堂大辞林

 

「時雨」は漢語としては元来、「ほどよいときに降る雨」
時雨が降る天候に変わることを時雨れる(しぐれる)ともいう引用:Wikipedia

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みにしば
「しぐれ」は季節限定
奈良時代の万葉集にも
雨についての言葉で多く使われています

 

 

情緒豊かな「しぐれ」に置換え

ということで、72候の第53候「霎時施(こさめときどきふる)」の「霎(こさめ)」は、季節感のあるもともとの「しぐれ」に置き換えると、わかりやすいです。

 

「しぐれ」は、大陸からの季節風が、日本海の上を通過するときに発生した雲が降らせる雨のこと。

冬の季節風が吹き、寒冷前線がもたらす一過性の雨です。信州は日本海岸気候と太平洋側気候の境にあたるので、晩秋から初冬に「しぐれる」ことが多くなる地域なのです。

「しぐれ」は、雨雲の雲足が速くて、雲がいなくなるとまた晴れるので「一時的に降ったりやんだり」。さらに「気温が低め」なシーンをあらわします。「こさめ」が単に雨量をあらわしているのに対して、「しぐれ」は情緒的情報が言葉の中にイメージとして含まれていて、芸術や文学に多く使われてきたのもうなずけます。

近代化に猛進する明治時代、より平易な言葉で外国人とのコミュニケーションをとる必要があったのでしょうが、AIでなんでも最適化されつつある今となっては、同じ3文字でも、大和言葉の奥行きの深さに感動。ブログは、みにしばの忘備録でもありますの。

 

 


にゃんこ先生
春に「しぐれ」なんて言ったら笑われるわよ
秋は「しぐれ」春は「はるさめ」よ~

 

 

 

時空を超えてつながるキーワード

言葉ってすごいですね。
文字に遺すことで、この世で会ったもこと無い人の共感を得るだけでなく、時代を超えて生き続けるんですもの。

15世紀から18世紀に「時雨(しぐれ)」を、題材にしてつながる連歌をご紹介。
高井几董「俳諧に古人ある世の時雨かな」のように、

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みにしば
見て下さい  歴代の
連歌や俳句が「しぐれ」って
キーワードでつながってる!

連歌(れんが)とは

鎌倉時代ごろから興り、南北朝時代から室町時代にかけて大成された、日本の伝統的な詩形の一種。多人数による連作形式を取りつつも、厳密なルール(式目)を基にして全体的な構造を持つ。和歌のつよい影響のもとに成立し、後に俳諧の連歌や発句(俳句)がここから派生している。 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

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みにしば
芭蕉は、もはやパクリでは・・

にゃんこ先生
芭蕉は連歌師の宗祇(そうぎ)を尊敬してて、たくさん影響を受けたのよ
宗祇のお師匠さんの心敬(しんけい)は、戦国時代の連歌師で天台宗の僧よ
室町・安土桃山 1406年 1475年 心敬 雲はなを定めある世のしぐれかな
室町・安土桃山 1421年 1502年 宗祇
※ 世にふるもさらに時雨のやどり哉
江戸前期 1644年 1694年 松尾芭蕉
※ 世にふるもさらに宗祇のやどり哉
江戸中期 1716年 1784年 与謝蕪村 しぐるるや我も古人の夜に似たる
江戸中期 1741年 1789年 高井几董 俳諧に古人ある世の時雨かな

江戸時代の俳諧・松尾芭蕉の命日1旧暦10月12日は「時雨忌」。

時雨の時期が命日だというだけでないんです。
生前、芭蕉は「時雨」を詠んだ歌も多く、日本の文学伝統を継承していく意志が「時雨に」込められているとされたからのようです。

 


にゃんこ先生

いつの時代だって
先の事なんかわからないよね~

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みにしば
「しぐるるや我も古人の夜に似たる」は
わかりやすくて好きです

まとめ

時雨を、一日のうちでとらえるなら、降ったりやんだり変わりやすく定まらず捕えどころのない印象。
けれど、現代も戦国時代ど同じくらい激動の時代。
変化の激しい流れの中で、太古の昔から変わらず繰り返される自然の営みに触れることは、心の拠り所になることでしょう。
今だけ自分だけの近視的で「誰かにとって都合がいいだけ」の価値観に翻弄されていることに気づくかもしれません。

季節や自然、動植物に心を添わせ「時雨のある心象風景」を時空を超えて、万葉の人々や戦国武士、茶人、連歌師たちと共感できるなんて、とても幸せな気持ちになります。紅葉を見にお出掛けするのもいいけど、丁寧に居れたお茶で、しぐれ雨をながめるのも贅沢。

あなたも、信州×旧暦72候で豊かにくらしませんか。

 

 

<出典>

『雨の名前』高橋順子(小学館)

和風ネーミング辞典 https://naming-dic.com/wa/word/