おばあちゃんと蛍【第26候 腐草為蛍】(くされたるくさほたるとなる)思い出編

今日は、みにしばストーリー。
リアルおばちゃんとの思い出話です。
うちは3世代同居で
カエルの大合唱に包まれた、田んぼのど真ん中で暮らしていました。
夜は闇が濃くて、宇宙の真ん中って思えるくらい何にもなかったです。
大正生まれのおばあちゃん
おばあちゃんは自転車も車も、乗れない時代の人。
だからどまこでも歩く、大正生まれの戦時中育ち。
旦那さんを3回戦争に連れて行かれた間、女手ひとつで子育てしたって言うから
そりゃ、気丈でなくちゃ、やっていけません。
一緒に住んでいて、しつけは、とても厳しかったです。
戦争を経験した独特の世界観を、ときどき垣間見せたけど、そうとわかったのは大人になってからの話。当時は、ナンデ急に怒るんだろうって不思議でした。
蛍の思い出
夏の夕涼み。
一家そろって母屋で夕食のあと、おばあちゃんとおじいちゃんは、はなれにうつる。
子どもたちは
ふわりと舞う蛍の光を、兄たちと競って追いかけ、田んぼに落ちたことは数知れず。
たしか、6月よりもっと遅い時期。あの光はヘイケボタルだったのでしょうか。
① たくさんの蛍を瓶に詰める
② 蛍ランプにして、ベットに灯す
③ 次の朝、蛍を逃がし忘れて学校へ
④ 瓶の中の蛍は全滅
⑤ おばあちゃん激怒
おばあちゃんは、なぜか蛍以外は、ミミズもカブトムシや蝶の昆虫採集は怒らないのです。
みにしばの心をとらえたポイントは2つ。
蛍ランプの美しさ
おばあちゃんの様子
おばあちゃんの観察

ナンデ、蛍だけ捕まえちゃいけないの?

ナンデ、蛍は『死んだ人の生まれ変わり』なの?

ナンデ、昔からそうなの?

おばあちゃん、ありがとう。
3ストローク半のやりとりに、今でも愛しか感じません。
子育て世代ならお気づきでしょう
これ、こどもあるあるです。
しかも、私は怒られているのに、おばあちゃんの目の血走り方とか、怒りで頭に血が上って顔が赤くなる様子とか、手をぐっと握ってできた爪跡とか、首筋の血管の浮き出る感じとか、声の震え具合とトーンの関係性なんかを、じーーーーーーと観察しちゃう子だったのです。
その時の、おばあちゃんは静かに怒っているのに、悲しくて叫んでいるようで。こうして記憶に残るほど違和感があったのです。
子どもは、周囲の大人を通して、世の中を知る生き物。違和感や幸福感を肌で感じて、洞察力を養っていくんじゃないかな。
向き合うことは子供にとって栄養
今でも、「忙しい」は大人が、こどもをあしらう便利な言葉。
共働きの両親に代わって、唯一、正面から向き合ってくれる存在が、おばあちゃんでした。
蛍ランプの時、おばあちゃんのあの怒りは
きっと蛍の光に、戦争で失われたたくさんの命を見たのでしょう。近所のおじさんや親戚の従弟、実の弟たち。そして、そのことを口にするのも憚られ、言葉にできなかった。戦争にまつわる封印していた記憶も、きっと絡みついていたのかもしれません。
普段、丁寧に愛情深く向き合ってくれていたから、あの時の怒りの様子は、ザラリと心に残っています。
まとめ
インターネットの時代。
みにしばの「ナンデ?」の答えは、もっと早く手に入りそうです。
本を読んだりググったり。
おかげで、今こうして「小さい頃の自分の疑問」を解きほぐすことができます。
おばあちゃんにとって、蛍は、尊ぶべき死者の魂で
「昔からそうだった」っていう「昔」とは、平安時代以前の生死観。
1000年以上前の「蛍の光」について、生死観を受け継ぐ者がこんなに身近に居たとは!
温故知新の再発見。
蛍が鳴けないように「言えなかった時代」が確実にあります。
そんな人にアクセスできる、みにしばの大切な思い出です。
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